
オーナー様にとって、空室の次に気になるのは賃料の滞納問題ではないでしょうか。催促して直ぐに支払って貰えれば良いのですが、中には長期に渡って支払いが滞るケースもあります。滞納の要因を理解して、万が一滞納が発生しても素早い対応ができるようにしましょう。
滞納とは「何か」
普通の賃貸借契約書には必ず毎月の賃料の支払日・支払方法・支払先が記載されていると思います。借主がその指定された日時に賃料の支払いを忘れ(怠り)、賃料が滞ることを言います。
滞納の原因について
滞納が起こる原因は様々です。「仕事が忙しくうっかり忘れた」「勤めていた会社が倒産して支払う事ができなくなった」などの内容から、「賃料を支払う意思がない」といったものまで、多種多様です。
督促することによって賃借人との信頼関係が崩れないように対応する事が大切で、借主の状況をよく聞いて互いに納得できるような方向で進めましょう。但し、「夜逃げした」「相当な期間滞納している」「支払意思がない」等のようなケースでは、ある程度法の力を借りる事も考える必要があるかもしれません。
督促の方法について
督促の第一段階
電話・書面(文章)・訪問などにより督促を行います。本人に対して行動を起こしますが、改善が無い場合は連帯保証人に対して行動を起こします。相手に対して確実に督促の意志を伝えることがポイントで、書面(文書)の場合は伝わりにくいこともありますので、送付の方法には注意が必要です。
督促の第二段階
第一段階の方法でも改善できない場合には、法的手段を考える事になります。
賃料だけの回収か賃料とその他の行為も併せて行うのかにより、方法が分かれます。
滞納賃料回収のみの場合
相手が任意で部屋を空け渡したが滞納賃料だけが残っているようなケースに、その賃料を回収するときに使うことが多いようです。

内容証明郵便
いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書が差し出されたかを郵便事業(株)が証明するものです。
- 差出人の意志が相手に伝わったという事を証明します
- 法的な根拠となるが、強制力はありません
- 内容の保管期間は5年です
少額訴訟制度
簡易裁判所にて、裁判を簡易・迅速・低廉な手続で行うことができる制度です。
- 請求金額は60万円以下となります
- 和解となる場合が多く、分割弁済となる可能性があります
- 判決に対する異議の申し立ては原則できませんが、裁定への異議申し立てはできます
支払督促制度
簡易裁判所から債務者に対して、金銭などの支払を命じる督促状(支払督促)を送ってもらえる制度です。
- 異議の申し立てがあった場合、通常裁判に移行します
- 債務者の所在が不明の場合では利用が難しくなります
滞納賃料回収と契約の解除及び明渡しの場合
相手がまだ部屋を占有(明渡していない)している状況での賃料の回収などに使うことが多いようです

明渡訴訟
通常裁判の判決を得た後、明渡しの強制執行を行うための手続きのことです。
- 確定判決(若しくは同等の効果のあるもの)が必要となります
- 事案により解決までには『相当の期間および相当な費用』がかかることがあります
- 和解となるケースもあります
強制執行
地方裁判所にて強制執行の手続きを行うことで、執行機関及び執行官が債務者の目的物に対する占有を解き、債権者にその占有を取得させる方法により行われます。
- 印紙代・弁護士費用等、実費がかかることがあります
- 事案により解決までには『相当の期間および相当な費用』がかかることがあります
- 滞納賃料の回収も行われることがあります
補足
- 債務名義の獲得
- 事案によっては『多額の費用』(裁判費用・弁護士費用の他に、占有移転禁止仮処分の保証金、強制執行時の人夫代金やトラック・倉庫代金などの費用)がかかることがあります
- 滞納開始から明渡しまでの賃料収入(回収は困難な場合が多い)
※これらの負担は、管理を委託した場合でも、管理会社と特別な約定(裁判費用負担・賃料滞納負担)を儲けた契約を結ばない限り貸主様が負担することになります。また、弊社に管理を委託された場合、多くの事例を扱いました経験豊かな弁護士等をご紹介しております。
滞納のリスク回避を考える
近年は消費社会と言われていますが、自己破産件数の増加などからも分かるように、支払い能力に問題を抱える人が増えています。まずは“滞納を発生させない”こと、そして滞納の発生によって生じるリスクを“どのようにカバーするか”を事前に考えておくことが大切です。滞納が発生した時に家賃が保証される、窓口として補助してくれるなどの管理を含めて委託することが一番のリスク回避かもしれません。